カグラオーナーのフランス滞在記 4 日本人とはなんぞや&店を移る 編


 

働きはじめてしばらくした頃

なんとなくですが

 

フランス人の気質というか

大雑把に性格が

理解できるようになりました。 

 

 

彼等は良い意味で

童心にあふれています。

大の大人が

たわいないことで大はしゃぎし

たわいないことでケンカします。

 

そして楽観主義。

 

好きな事を語る時は

目をキラキラさせます。

 

それが僕には

少し眩しく感じました。 

 

 

そしてフランスという国に

誇りを持っています。

  

 

彼等に

 

『フランスのことが好きですか?』

 

とか 

 

『フランスの国歌の意味を

知っていますか?』 

 

 

という質問をすると

怒りだすそうです。 

 

 

 

『フランス人がフランスを好きなのは当たり前だろう?』

 

『フランス人に、

フランスの国歌の意味を知っているかだと?』

 

 

『知っていて

当たり前のことを聞くのか?

 

お前は俺をバカにしているのか?』

  

 

となるそうです。 

 

 

僕はこの話をきいて

恥ずかしくなりました。 

  

僕は日本人ですが

 

日本を知らなかった

 

君が代の意味さえ知らなかった。 

 

   

日本に生まれただけで

日本人なのか? 

日本人として

語る言葉もないのに?

 

だったら僕は何人なんだ? 

  

 

僕は異国に行って初めて

日本を意識したんですね。

  

 

  

服を10着程度しか

持たないフランス人。

 

でもオシャレに着こなして 

  

 

『それ、前も着てたよね?』 

  

 

なんて嫌味を言う奴もいません。

 

 

必要以上にお金を必要としないし

車を買ったからとわざわざ呼び出して

ボロの中古車を誇らしげに

自慢したりします。 

 

 

僕は正直、羨ましく思いました。 

 

 

日本はダメだな。と思いました。 

  

 

 

でも矛盾がありました。  

  

 

日本人の僕が

日本はダメだと思っているのに 

 

フランス人はとにかく

日本人が大好きです。 

 

僕と関わった人達が特別

そうだったのかもしれません。

 

 

この時はまだその理由を

分かっていませんでした。  

 

  

 

話を戻します。

 

 

働き初めて2か月くらいかな?

そんな頃です。

 

1人のフランス人男性が

店にやってきました。

 

 

その方はシェフ(料理長)と親しげに話してます。

 

さして気にしてなかったんですが

オーナーが厨房に顔をだして

僕を呼びました。

 

ビックリしました。 

 

 

この人はパリのド真ん中にある老舗のシェフでした。

 (1度だけ食べに行ったことがありました)

  

 

何か言っていますが 

早口でよく分かりません。

 

 

僕が 

『すいません。

もう少しゆっくり話してください』 

 

というとゆっくり

 

 

『君は日本人なんだってね』   

 

    

「はい、日本人です」

   

 

 

『君は料理人か?』  

 

 

 

「はい。料理人です」

 

 

 

と答えました。 

 

 

 

『そうか。

デザートはできるか?』  

 

  

 

と聞いてきたので  

パティシエ(デザート職人)を探していると分かりました。 

  

 

日本でもそうでしたが、

総じてパティシエは人員不足だと

聞いていました。 

  

 

 

これはチャンスだ 

 

 

 

でもお世話になっている

働かせてくれている皆を裏切ることに

なるんじゃないか?

 

一瞬そう思い、

横にいるオーナーの顔をみました。 

 

 

オーナーは

ニコっと笑って

僕の肩を叩きました。 

 

 

『行け』と言っている。 

 

そう感じました。 

 

  

即答しました。

  

 

「パティシエできます。」

 

 

 

 

『いいだろう。

来週から来なさい。』 

 

 

どうも最初から

話がついていたようでした。

  

 

こうして店を移ることになりました。

  

 

フランスでも日本でも

コックがレストランを渡り歩くのは

珍しいことではありません。

 

フランスでは料理人の地位が高く

国を上げて職人を育てようという

気運がありました。 

 

 

さらに僕は運が良かった。

 

  

 

店を移る前日、

ささやかな

送別会を開いてくれました。 

  

 

帰り際、 

カヌテ君が 

 

『オニー』

  

と言って手紙をくれました。 

 

 

凄く嬉しかった。 

 

 

開けてみると 

 

 

アラブ文字で読めませんでした。 

(まさかの)

  

  

だけどいつか

読める日がくるかもしれないので 

今でも大切に持っています。

    

 

 

つづく