カグラオーナーのフランス滞在記 10    日本大好き16歳シモンくん編


 

ナルボンヌで働き始めました。 

ミシュラン1つ星の高級店です。

 

 

僕の担当はなんと魚料理。

それも責任者! 

  

 

きたー!  思いました。 

 

   

フランスのレストランで

魚料理を日本人の僕が任された。 

(おそらく

パリの店の料理長が推してくれた)

 

 

感動しました😂 

  

 

期待に応える為に頑張ろう!

心に誓いました。 

 

 

そして初めての部下。 

シモンを紹介されました。 

  

 

シモンは16歳。  

 

フランスでは高校生になると 

職業研修制度みたいのがあります。  

 

アルバイトとは違います。

学校の授業後と休みの日は

料理人の卵として

ガッツリ仕事に参加します。 

 

 

シェフにシモンを紹介されました。 

 

小っちゃくて太っててですね。 

マスコットみたいなシモン。 

 

 

『ダイシュケ! よろしくな!』 

 

と親指立てて決めポーズ。 

 

 

シモンは日本大好き少年です。

 

フランス人の多くは子供の頃から 

日本のアニメとテレビゲームに

親しんでいることもあり

基本的に日本に好意的です。   

 

   

(フランスサッカーが強いのは 

キャプテン翼を見てサッカー人口が

増えたからという一面もあります。 

キャプテン翼のフランス語名は 

「オリーブとトム」です。ナゼカ) 

 

 

でもシモンは

その枠に収まらないくらい

日本を熱愛してます。 

 

 

そしていつか日本に行くんだ! 

って目をキラキラさせます。 

 

そして日本語を勉強してます。 

 

   

ザルを手に持ち日本語で 

 

『ダイシュケ!

これ、なんていう?』 

 

ときいてきます。 

 

 

「これは、ザル。」と教えると  

 

 

『ざぁぁぁぁぁーーーるっ?』

と繰り返します。 

 

 

こんな感じのやりとり多かったです笑 

 

  

そしていつもついてきます。 

 

ここのレストランでは

ランチ営業が終わってディナー営業

までの2~3時間は自由です。

(日本では考えられない)

 

その間は皆、一旦帰宅するんです。  

 

  

なぜか普通に僕を待っていて 

 

『ダイシュケ!まだか!』(日本語) 

 

と怒ります。  

 

 

途中まで一緒に行こうという意味だと

思ってました。 

  

帰り道

スーパーによるもついてくる。 

カフェによるもついてくる。 

 

そのまま僕の部屋までついてくる。 

 

 

そして 

 

『ゲームはないのか?』  

 

と文句を言います。 

 

 

そろそろ帰れよ、というと 

 

『なんで?』 

 

と言って居座ります。 

 

 

思春期らしく

髪型を気にしているようです。 

 

ちょっかいだして触ると 

 

  

『やめろ! 触るな!』  

 

と全身を

ブルブルさせながら怒ります。 

 

 

そして時間になったら

一緒に出勤します。

 

 

気になったのが

通信販売で買ったらしい

「ヌンチャク」

をいつも持ち歩くこと。 

  

そしてところ構わず練習します。 

 

 

『ブルースリーかっこいいよな!』 

 

『俺はブルースリーのような料理人になるんだ!』 

 

 

意味不明でした。 

 

 

『ブルースリーの墓は

どこにあるんだ?』 

 

ときくので 

  

「知らない」と答えると 

 

 

『ダイシュケは日本人なのに

知らないのか』 

 

と文句を言います。 

 

 

「いや、知らんよ普通。」 

 

「中国も好きなのか?」 

  

ときくと、 

 

 

目をまん丸にして驚いて 

  

 

『ブ、ブルースリーは、

 ちゅ、ちゅ、中国人なのか!?』 

 

 

とかなりショックを

受けている様子。 

 

あからさまに落ち込んでました。

(悪いことしたかな) 

  

 

知らなかったのかよ。。。 

 

 

でもすぐに立ち直り 

 

『中国人は嫌いだけど 

ブルースリーは特別だ!』 

 

と開き直ってました。 

 

  

 

またある時、 

 

レストランで仕事するとき 

 

シモンが鼻歌歌いながらやるんで 

 

 

「おいシモン

鼻歌やめろ。集中しろ」 

 

 

と言うと  

 

 

『なんで鼻歌ダメなんだ!』

とまた怒る。 

 

 

そこに料理長がたまたま来たら 

 

『シェフ! ダイシュケが

鼻歌歌うなと言うんだ!』 

 

とクレーム。 

 

 

すると料理長は眉毛を八の字にして 

  

 

『なんで鼻歌ダメなんだ?

ダイシュケ?』 

 

 

『鼻歌歌うと楽しいぞー』 

 

 

と言ってリズムをとり歌いだし 

 

それに他のスタッフがのっかって 

 

皆で大合唱するという。。。 

   

 

 

(ここはフランスだったー!)

 思いました。 

 

 

シモンの勝ち誇った顔が

イラついたので 

髪型を崩してやりました。 

 

 

 

そんなある日、 

 

シモンが目をキラキラさせて 

 

『やっぱり日本はスゲーな!』

って。 

 

 

どうも高校の授業で

日本について学んだらしく。 

教科書を広げて、僕に見ろと。 

 

 

なんて書いてあるのか

サッパリ分かりませんでしたが

写真を見て

第二次世界大戦の内容だと

分かりました。 

 

シモンは教科書の

太文字の部分を指さして 

 

 

『ここだ!ここ!』 

 

 

読めないので辞書で調べると 

  

 

「日本がアジアを解放させた」 

 

 

かなりビックリしました。 

  

フランスは当時、日本の敵国。

 

戦争で日本は悪いことをしたと 

僕は教えられてきたんです。  

 

なのに、 

フランスの教科書では 

日本の戦争を肯定するだけでなく

称えているようでもあります。

 

敵国だったのに。 

 

 

シモンは 


『ダイシュケ!』

『 天皇ってなんだ?』  

 

ときいてきました。 

 

 

当時、何も知らなかった僕は 

  

「いや、知らない」 

 

と答えると 

 

『なんだよー教えてくれよー

なんだよー』 

 

って日本人なんだから本当は知って

いるはずだと思い込んでました。 

 

 

しつこいので 

 

「いや、シモン。

ホントに知らないんだ」 

 

 

と真剣に言った時です。 

 

  

 

シモンが一瞬ドン引きしたんです。 

  

 

 

その表情は今でも思い出します。 

 

僕はこの時思いました。 

 

 

日本人なのに

日本のことを知らないって

やっぱり、おかしいよな。 

 

 

このことで

フランスの少年に

日本人について考えるキッカケを

もらったことに感謝してます。 

 

それから僕は 

  

 

「ちゃんと日本について勉強しよう」


と思いました。 

 

  

 

つづく