カグラオーナーのフランス滞在記 15    2つ星料理長のかけ声 編 


ナルボンヌの隣町

モンペリエで開催される

大晩餐会。 

  

 

南仏の著名人が集まる

パーティーの料理。

どんなことになるやら

想像すらできません。

 

それまで

パーティー料理を作った事があっても

200人の料理を作るというのは

未経験です。 

  

 

まぁ、ビビりました。

 

 

僕はこの話が出たとき、

実は帰国を考えていたんです。 

  

 

僕の中で 

日本人としてのアイデンティティが 

抑えられないほど強くなっていました。 

 

それまでの自分とは別人になったかの

ような感覚です。 

 

うまく言えませんが。 

 

とにかく日本に帰りたくなった。 

(ホームシックとは違うと思います) 

 

  

そこでこの話がきて決意。 

 

この晩餐会を最後に帰国しよう。と。

 

 

最後だ。 

フランス修行の集大成。 

 

  

  

やってやるぜ。🔥 

 

 

 

気合い満タンです。 

 

  

 

まずは料理長にその話をし 

皆に伝えました。 

 

 

『そうか、寂しくなるな』と。 

 

ちょっとしんみりしました。 

  

 

それから僕の頭の中は  

 

有終の美を飾って  

フランスに恩返しして

 

日本に帰る。 

 

それだけになりました。 

 

 

 

そして晩餐会の日はやってきます。 

 

ボルテージは最高潮。 

 

 

レストランは臨時休業となり 

 

スタッフは車に乗り込み隣町へ向かいます。 

 

 

季節は冬。 

 

数日前に

この地方としては珍しい雪がふり

かすかにまだ残っています。 

 

 

現地に到着。 

 

 

豪華絢爛の大会場。 

 

裏口から入り厨房へ。 

 

 

ドアを開けると 

これまた巨大な厨房に

他のレストランスタッフがひしめき合い

圧倒されました。 

 

大声で飛び交う指示。

走るスタッフ。 

 

  

みんな気合い十分。 

 

この仲間に入れることが嬉しかったです。

 

 

挨拶をして参加します。

 

僕以外のスタッフは

けっこう知り合いが多いみたいです。 

 

 

僕の知り合いはいません。 

いつものことですが

ちょっと寂しい。 

 

 

そんな中、 

 

 

ん? 

 

 

なんと1人のアジア人発見! 

 

直感的に日本人だと思いました。 

 

 

さっそく挨拶。 

 

彼もまさかの日本人に驚いていました。   

 

そして彼もビザなしでした笑 

 

 

たわいない会話でしたが 

なんだか凄く嬉しかったです。

 

  

しばらくすると

モンペリエの2つ星料理長が登場。 

 

今日の料理責任者です。  

 

 

2つ星料理長が大きい声で今日の概要を話します。 

 

さっぱり分かりませんが 

 

ウィ !

 

ウィ !

  

と応えます。

 

 

そしてこのかけ声がでました。 

 

 

  

 

 

 

『・・・・わかったか!?』 

 

  

 

 

・・・ アレ!! オニヴァ!!』 

 

( ・・・よっしゃいくぞ!!)

 


 

  

 

 

 

全員で応えます。 

 

  

 

 

 

『  ウィ!!  』


『    シェフ!!  』  

 

 

 

 

ビリビリッと体に電気が走りました。 

 

 

 

つづく